ぶっちゃけ、移住ってどうなの? 沖縄・久米島の移住者に突撃インタビュー
「今の仕事を辞めたら、沖縄でのんびり暮らしてみたいなぁ......」
そんな沖縄移住への憧れは、誰しも一度は耳にしたことがあるような夢のひとつです。わたしも考えたことがある、という人も少なくないのではないでしょうか?
移住に際して望むことは人それぞれですが、「せっかく住むんだったら、離島がいいな」という声も多いようです。そんな離島派におすすめしたいのが、那覇から飛行機で約30分の島、久米島。しかし離島ともなると、ただでさえ低くはない移住のハードルが、さらに高く感じられてしまうかもしれません。
かくいうわたくし川村も、沖縄移住の経験者。わたしは那覇への移住でしたが、「家」「仕事」「ご近所付き合い」の3つについては、よく尋ねられました。(ちなみに、以上3点においては、那覇はほとんど本土と変わりません)
那覇でもわからないことだらけなのだから、いわんや離島をは。「家が借りにくいってよく聞くけど......」「仕事はあるの?」「ご近所付き合いって大変じゃない?」
そんな疑問を解消すべく、今回は、久米島で暮らす2人の移住者さんにお話を聞きに行きました!
目次
アグレッシブなナニワの商売人! 大阪出身の松本さん
まずやってきたのが、久米島に移住して3年という松本さんのお宅。
川村「お邪魔しまーす......って、ヤギ びっくりした~」
松本さん「おう、メエ太郎って呼んどるんやけどな」
いきなりヤギのお出迎えです。ヤギは、沖縄ではポピュラーな動物。最近ではペットとして飼っている人も多いようですが、基本的には食用の家畜です。ということは......
松本さん「うん、親は食べた!」
やっぱり! 出だしから'沖縄あるある'の洗礼を受けてしまいました。それにしても松本さん、食用にヤギを飼うとは、すっかりこちらでの暮らしに馴染んでいる様子です。
松本さんは、久米島に移住して3年目。それまでは大阪以外へ引っ越したことはなく、ずっと漁業関係の会社を経営されていたといいます。
そんな松本さんの転機は、2011年。紀伊半島を襲った豪雨によって、和歌山のとある村に住むお友達の家が流されてしまった時のこと。応援にかけつけた松本さんは、しばらくその村に滞在することにしました。そのうちに「次は田舎で暮らしてみるのもいいかもなぁ」と思ったことが、今の久米島移住へと繋がっていったのでした。
松本さん「なんか新しい場所で新しい生活を送りたかったってのが大きかったんちゃうかな。それで調べるうちに、久米島ええやん! ってなって」
川村「迷ったりしなかったんですか?」
松本さん「いや、なかったなぁ。寒いのが嫌いやったし、暖かいところで、移住者の受け入れに前向きで、商売に向いてそうで......って調べていったら、ここしかなかったな」
商売......つまり仕事のことは、松本さんにとっても気になるポイントだったよう。「ここではどういう仕事を作っていけるだろう、という目でその土地を見ることが大切」だと松本さんは話します。
たとえば、久米島の耕地面積の8割を占める作物である、サトウキビ。松本さんがその農作業の様子を眺めていたところ、人手が足りないことも相まって、効率の悪さが目につきました。
そこで松本さんは、サトウキビ農家を訪ねて、作業を任せてくれるよう打診します。これには困っていた農家さんも大助かり! 松本さんは仲間を集めて作業分担することで効率化を図り、時給換算で2,000円を実現したのでした。
川村「すごい、Win-Winすぎる」
松本さん「やろ(笑)」
家賃はたったの◯万円! 松本さんの家と暮らし
そんな世渡り上手な松本さんなので、家のことやご近所付き合いには、あまり困らなかったようです。
川村「この家は、どうやって借りたんですか? お仏壇も置いたままだし、なかなか一般には出回らなさそうな家だと思うんですけど」
松本さん「いや、もともとは違うところに住んどったんやけどな、ここの大家さんと仲ようなって。タダで住んでもらっていいよ、いやいやタダは、なんてやりとりの末、1万円で借りとるんや」
きました、家賃、まさかの1万円! ちなみにこちらの松本邸、縁側がある4LDKの平屋と庭、離れからなる、なかなかの豪邸です。
松本さん「仏壇があるから貸してくれないって俺ら本州の人間は思いがちやけど、逆に島の人からよくよく話を聞いたら、仏壇があるから借りてもらえないって思ってたりするみたいやな」
たしかに、そういった思い込みで、勝手にハードルを上げてしまっていることってありますよね。頭でっかちになるよりも、まず目の前の人に聞いてみたほうが、事はスムーズに運ぶのかもしれません。
川村「実際に住んでみて、どうですか? ホームシックになったりとか」
松本さん「いや、全然ない。困ることも特にないし、移住者だからって村八分とか、あんなん嘘やで(笑)。そこの庭に建ってる離れ、今フランス人と日本人の夫婦がホームステイしとるで。そういうおもしろい人がどんどん集まってくれたらいいなって、そういうことばっかり考えとるな」
久米島の現状と、松本さんの今後の願い
最後に、久米島移住にあたって、いちばん大切だと思うことを聞いてみました。
松本さん「うーん、悪さはしないこと!」
川村「え?」
松本さん「いや、久米島に限ったことじゃないけど大事やで! 特にこの島の人は、財布を置いたまま車に鍵もかけんと離れたりするから、悪いことしよう思ったらいくらでもできてしまう。けれど、そういうことをしたら人に迷惑もかかるし、何より、自分に罪悪感が生まれて逃げたくなってしまう、そういうもんやで」
久米島での生活をしっかりと見据えている松本さんらしい、地に足がついた教えです。移住先でも普通の暮らしを送るために、普通の行動をする。そんな当たり前のことこそ、見落としがちで、そして一番大切なのことなのかもしれません。
ちなみに2017年現在、久米島の人口は8,000人足らず。島に病院はありますが、診療科目によっては、お医者さんが足りていない状況です。特に困るのは、出産。久米島の人は、那覇まで出て出産するケースが多いようです。
松本さん「人口が1万人になったら、そんな状況も変わってくる。だから、もっと移住者がばんばん増えてくような、おもろいことをやっていきたいもんやな。今考えてるのはなぁ......」
おっと、ここから先の話は、まだ皆さんには内緒です。松本さんのような移住者によって、近い将来、久米島に新たな産業が生まれていったら素敵ですね。
松本さん「ところで台風が近づいとるけど」
川村「あ、はい、そうなんですよね......」
松本さん「秋は台風が多いから飛行機がばんばん欠航するし、気をつけなあかんで」
で、ですよね~。実際、わたしが予約していた復路便はなんとか無事に飛びましたが、その後の便からは欠航に。秋に久米島へ移住下見や旅行に来る方は、要注意です。
あるいは、いっそ開き直って「飛行機が飛ばないので帰れません」なんていいわけで延泊しちゃうのもアリかも (責任は一切負いません笑)
久米島公認のプロブロガー! 東京出身のサッシさん
次にお会いしたのは、久米島移住歴5年目の中村サッシさん。塾講師、託児所経営、そして「久米島 島ぐらし認定ブロガー」として活躍するマルチプレイヤーです。
川村「島ぐらし認定ブロガーってなんだかすごいですね! これはどういったものなんですか?」
サッシさん「久米島って、けっこう移住サポートがしっかりしていて、その取り組みを『久米島 島ぐらしコンシェルジュ』 という相談窓口が行っているんですよ。そこから認定をいただいたブロガー、ということですね」
川村「なるほど! つまり、久米島公認の、島や移住に関する情報が満載のブログということですね!」
サッシさん「ちょっと恥ずかしいですけど、そういうことです(笑)」
それもそのはず、サッシさんのブログ『毎日が生まれたて』 は、月間10万以上のPV(ページビュー)を誇る超人気ブログ。
サッシさん&奥さんのカヨさんがつづる記事は、'金なし、コネなし、仕事なし! でも子ども3人あり!'の状態から久米島移住を果たした経験談のほか、格安SIMやインスタグラムで使える無料アプリなどのライフハックまで、多岐にわたります。
更新頻度は、驚異の2日に1回ペース。わたしの根暗ブログ(月間1,000PV、更新は半年に1回のみ......)とは雲泥の差です。
サッシさん「ハハハ、いえ、そういったブログも素敵なんですが、僕自身は情報発信こそが大切だと思っているんです。もともと'FMくめじま'でパーソナリティをしていたことが、ブログを書くきっかけになっていることもありますね」
爆誕! 史上最年少のラジオパーソナリティ
http://fmkumejima.com/
FMくめじまは、久米島唯一のラジオ放送局。移住してまだ間もない頃に、サッシさんとカヨさん、三女のサンちゃんの3人で番組パーソナリティを務めていたのだといいます。
3年にわたって人気を博した番組でしたが、サンちゃんの保育園への入園に伴い、泣く泣く終了したのだとか。
川村「ちょっと待ってください、保育園入園って......?」
サッシさん「三女は番組開始当時、0歳だったんです。その三女をDJにして『サンさんのいちゃりばちょーでー』(※いちゃりばちょーでー=沖縄のことわざで、一度会ったら皆兄弟の意) という番組をやって。企画や構成から完全にオリジナルでした。史上最年少DJということもあって、伝説のラジオ番組になりましたよ(笑)」
川村「で、でしょうね......。そもそも、どうしてラジオ番組がもてたんですか? 繋がりがあったとか?」
サッシさん「いや、ラジオやりたい! って言っていたら、ちょうどタイミングがよかったみたいで、声をかけてもらえたんですよね」
川村(なんか、いろいろと次元が違いすぎる......!)
サッシさん一家が、移住に至るまでの経緯
ここまで読んでいただいた方はすでにお気づきかもしれませんが、サッシさん、とにかくエネルギーがスゴイんです。発言のひとつひとつにパワーがあって、まるで太陽のよう。
川村「こう言ってはなんですが、あの、人としてレベルの違いを感じます! わたしみたいな日陰者は、どうやって移住したらいいんでしょうか」
サッシさん「いやいや、今でこそいろいろさせてもらっていますが、僕らも移住するまではだいぶ慎重でした。まず10日くらい島の様子を見て、翌年また来て1ヵ月ほど滞在しながら家を探して、さらに翌年、やっと移住したんです」
よりよい環境で子育てをするためにも、かねてから田舎への移住を考えていたというサッシさんご夫妻。
その上で、塾を経営することも決めていたので、子どもが多いところ、寒いところが嫌だったので暖かいところ、そして原発からは80km以上離れたところ......などなど、さまざまな条件でふるいにかけていった結果、久米島が残ったのだといいます。
サッシさん「久米島は自然も多いし、住み心地に不満はまったくないですね。おかげさまで、夕方は家族そろってビーチへ散歩に出かけたり、森で子どもたちを遊ばせたりと、のびのびとした生活を送っています」
久米島移住を考えている人へ、サッシさんからのアドバイス
川村「久米島に移住したいという人に、一言もらえますか?」
サッシさん「そうですねー、仕事でもなんでも、やっぱり自分のやりたいことを人に話し続けることは大切だと思います」
川村「ラジオ番組は、まさにその結果のご縁ですもんね」
サッシさん「そうそう。それに、僕らの場合、2回目の下見のときに、たまたま入った食堂で'移住を考えている'ということを話したのをきっかけに、家を紹介してもらったんです」
そ、それはすごい! けれど、決して大きくはない島だからこそ、やりたい仕事や住みたい家について発信することで、人の縁がすぐに繋がっていくのかもしれません。
サッシさん「とはいえ、これから移住する人にとっては、どこでどんな仕事があるのかわからないというのもまた事実ですよね。なので、こんな記事を最近書いてみたんですよ」
沖縄移住したいあなたを逆指名!沖縄の離島でリアルに「欲しい人材」を地元の情報通4人にドラフト会議してもらいました
今、久米島で求められている職業を、ドラフト会議スタイルで話し合っていく企画記事。これはわかりやすい、そしておもしろい......。さすが島ぐらし認定ブロガー、まいりました!
そのほか、個人的には以下の記事が特に参考になったのでご紹介します。久米島移住はもちろん、沖縄移住を検討されている方、沖縄をもっとディープに知りたい方は、ぜひご一読を。
【さいごに】久米島移住の3つの疑問まとめ
いかがでしたか? 最後に、冒頭の3つの疑問、「家」「仕事」「ご近所付き合い」について、今回お話を伺った松本さんとサッシさんの意見をまとめてみましょう。
■ 家が借りにくいってよく聞くけど......
→ これはおふたりとも完全否定!「県内の保証人をつけてほしい」などの問題は多少あるかもしれないとはお話しされていたものの、少なくともご自身が困ることはなかったようです。おふたりとも人のご縁で今の家を借りられているのを見ると、家を探しているということは、積極的に人に伝えていったほうがよさそうですね。
■ 仕事はあるの?
→ ないといえば、ない。あると考えたら、いくらでもある。前述の『久米島 島ぐらしコンシェルジュ』 では求人情報が見られるほか、これから移住してくる人たちと一緒に新しい仕事をつくりだす「共創移住」の取り組みも始まりました。仕事探しのサポート体制はバッチリなので、悩んだらまずは相談してみましょう。
■ ご近所付き合いって大変じゃない?
→ ライフスタイル次第。ないちゃー(本土の人)だからと仲間外れにされたりといったことは、ほとんどありません。ただ、行事は比較的多いため、がんばって参加しすぎると疲れてしまう可能性も......。自分のペースで関わっていくのがよさそうです。ただし、「スーンジ」と呼ばれる地域清掃には参加したほうがいいかも。
特に、おふたりと話して感じたのは、受け身ではなく自分から行動していくことの大切さでした。
とりわけ楽園的なイメージが先行しがちな沖縄離島移住ですが、「移住さえすればすべて解決!」「なんくるないさー!」 ......なんてことはありません。移住先での生活も、今と変わらない「生活」であることには違いません。しっかりと島や地域、そして自分と向き合っていける人に、久米島移住の道は開けるようです。
今回の記事から、少しでも久米島移住のイメージを持っていただけたら幸いです。それでは、よい移住、よい久米島旅を!
ライター:川村真美
協力:沖縄県・(一財)沖縄観光コンベンションビューロー
この記事を書いた人
- ホワイト・ベアーファミリー編集部こちらのコラムはホワイト・ベアーファミリー編集部スタッフや旅行商品の企画担当者、カスタマーサポートメンバーがセレクトした、気になる旅行情報や旅行に関連するお役立ち情報、観光地情報等を厳選してお届けしております!
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