人骨も散らばる 鍾乳洞散策!「ヤジヤーガマ」で久米島の歴史を学ぶ
沖縄は海などの美しい自然だけにとどまらず、独特の文化や歴史が魅力的な場所でもあります。
その昔、1429~1879年の450年間、沖縄は日本の南西諸島に存在した琉球王国でした。当時の日本は、中国をはじめ東南アジアや朝鮮などと盛んに貿易を行っており、なかでも久米島は寄港地として栄えていました。
久米島には、未だに琉球時代の歴史の面影が残る「ヤジヤーガマ」という鍾乳洞があります。一体どんな場所なのか、実際に足を運んでみることにしました。
「ヤジヤーガマ」ってどんなところ?
ヤジヤーガマは全長800mある久米島で最大級の鍾乳洞で、第二次世界大戦時には避難壕としても使われていました。「ヤジヤー」は地名、「ガマ」には洞窟という意味があります。
今回私は初心者でも参加しやすい約500mのコースを体験することにしました。
案内してくれたのは、ガイド歴約15年の保久村(ほくむら)さん。本職は農家さんで、季節ごとに島らっきょう、ドラゴンフルーツ、マンゴーなどを育てているのだそう。
耳元で囁くような小さな声で、これからお化け屋敷にでも向かうかのような独特な語り口です。
洞窟内ではオキナワコキクガシラコウモリのほか、クメカマドウマやオオゲジという足の長い虫、
そして、ヘビに足が生えたようなクメトカゲモドキや、名前の通りフナムシに似ているクメジマミズフナムシにも運がよければ(?)出会えるのだとか。幸いどれも無毒だそうです。(ただし触るとかぶれることがあるので注意!)
あなたも物知り博士に! 歴史や自然も学べる探検コース
保久村さんの後に続いて、いざヤジヤーガマへ!
まず目に飛び込んできたのは、階段下にジャングルのように生い茂る植物。鍾乳洞のイメージとはだいぶかけ離れているけれど、本当にこの奥にあるの......?
半信半疑になりながらも、ヘルメットと懐中電灯、軍手を装備し、準備OK!
最初に保久村さんが手にしたのは、サトイモ科のクワズイモ。
茎の汁を触ると手がかぶれ、根の黒いところは食べると死んでしまう有毒植物なのだそう......! ところが周囲の二酸化炭素を酸素に変える能力がほかの植物よりも高いことから、人気の観葉植物なんです。
島特有の植物の話を聞きながら歩いていると、ようやく石が散乱する洞窟らしい場所が見えてきました。
地面に転がっていたこの白い石は、死滅したサンゴや貝などが蓄積した「隆起石灰岩」です。
つまり太古の昔、このあたり一帯は海の底だったということ。エジプトのスフィンクスも同じ隆起石灰岩でできています。
年月を経て色が黒くなるとセメントの原料となり、さらには大理石へと進化を遂げるものもあるといいます。素人目には全く見分けがつきませんでしたが、このあたりにも大理石が転がっているのだそう。
階段を降りて歩いてきただけでも、上を見上げると地上からかなり深く、かつてここが海の底だったことが想像できます。
さぁ、ついに鍾乳洞の中へ!「自分の足元は自分で確保してください。気持ち悪くなったら必ず言ってくださいね」と、保久村さん。
気持ち悪くなることなんてあるの......? と少し不安に感じながらも、保久村さんの後についていくことにしました。灯りを消せば真っ暗闇。静寂の鍾乳洞で見つけたものとは?
一般的に鍾乳洞というと気温が低くて寒いイメージですが、さすが沖縄! 半袖でも全く寒くありません。
懐中電灯の灯りだけを頼りに進んでいくと、天井からつらら状に垂れ下がる「つらら石」があちこちに現れます。
つらら石は2cmほどの長さができるのに約2500年もかかるのだそう。普通の石に比べて体積が大きく、重さ1トン以上はあるのではないかと保久村さんは推測します。
地面に倒れているのは天井からちぎれ落ちてしまったつらら石。
「歩いているときに落ちてきたら怖いですね」と、私が言うと「そうなったら人のことを考えずに逃げなあかん(笑)」と、冗談を言う保久村さん。
暗闇の中のため、その冗談すらも少し怖く感じます。
身長156cmの私の頭上すれすれまで伸びたつらら石。ぶつからないよう、時折体を屈めながら進みます。
つらら石に注意を配っていると、突然目の前をバサバサと横切る音が......。
「うわぁっ! 何かが飛んでる!」
そう慌てる私に「コウモリだな。台風前だからいつもより騒がしい」と、冷静に答える保久村さん。その後も何度か飛び交っているのがわかり、急にモンスターハンターゲームのような不気味な雰囲気に。
天井を見上げると、クメカマドウマを発見。クメカマドウマはコウモリの糞をエサとしており、目の形はあるものの視力はゼロという珍しい性質をもっています。
つらら石から雫が垂れているのは、まだつらら石が成長している証。
試しに舐めてみたのですが、味は無味でした。
足元にあるのは、タケノコ上に伸びた「石筍(せきじゅん)」。
天井の水滴から析出した物質が床面に蓄積したもので、デコボコと歪な形をしています。
暗闇にだんだんと目が慣れてきたころ「懐中電灯を消してごらん」と、保久村さん。言われるがままに消してみると......
真っ暗。
そばにいるはずの保久村さんの姿も見えず、恐怖でしかありません。
もし懐中電灯がなければ、私は誰かに発見されるまでこの洞窟から外に出られない......。
すぐさま懐中電灯のスイッチをONにして歩き進むと、見えてきたのはキラキラと輝く「方解石」です。
鉱物の一種で、水晶のようなきらめきがあり、とても神秘的でした。
ほとんど舗装されていない道でしたが、ここからは雨水が流れ込んだ川の上に橋がかけられています。
鍾乳洞は今も雨水に侵食され、穴を広げているのだそう。長い年月をかけて広がっている、自然の威力の凄まじさを感じます。
そして、ついにゴールの500m地点にやってきました!
太陽の光が見えると警戒心が解き放たれ、安堵の気持ちに包まれました。
この上には、サトウキビ畑が広がっているそうですが、土の中はご覧の通り岩盤だらけで保水力がなく、サトウキビはすぐに枯れてしまうのだとか。
隣に目をやると衝撃の光景が......!
なんとそこには本物の人骨が......。緑色に見えるのはカビが生えて変色したものです。
聞くと、琉球時代は王族や士族以外の者が墓を持つことは原則として禁じられていたため、庶民は遺体を風にさらす風葬墓(ふうそうばか)の習慣があったといいます。
雨水が流れるよう、上下に穴を開けたカメに遺体を入れ、骨になるまでおよそ10年間。少しでも日の当たるところへとの思いで置かれたカメですが、その後、台風などの被害でひっくり返り、散らばった骨が今もこうして残っているのです。
なぜここまで残っているのかというと、本州には酸性の火山岩が多く、ものを腐らせやすいのに対し、久米島には石灰岩が多いので、化石として残りやすいのです。
※通常人骨は撮影不可ですが、今回は取材のため許可をいただきました
写真は実際に住民や日本兵の避難壕として使われていたガマの一部です。
さらに500m先では、1万6000年前のウルム氷河期の生後6ヵ月の子どもの骨が発見されたといいます。このあたりは縄文時代や旧石器時代の骨が発見されることが非常に多いのだそう。
久米島の文化や歴史を堪能できるヤジヤーガマへ行ってみよう!
同じルートを戻り、再びスタート地点へ戻ってきました。
ヤジヤーガマは、単なる鍾乳洞ではなく、古来の久米島の歴史を深く学べる場所でした。人によっては苦手な方もいるかもしれませんが、文化や歴史を知ることで、さらに久米島の奥深さを知るきっかけにもなると思います。皆さんもヤジヤーガマで洞窟探検をしてみてはいかがでしょうか。
所要時間:2時間
催行人数:2名~
対象年齢:小学生以上
料金:4,000円(ヘッドライトor懐中電灯とヘルメットのレンタル代金含む)
集合場所:ヤジヤーガマ駐車場
予約方法:久米島町観光協会(民泊事業部)電話/098-851-7973 受付時間/平日午前9時~17時
URL:http://www.kanko-kumejima.com/archives/11421
その他:動きやすく濡れてもいい服装、スニーカー、日焼け・熱射病対策ができるもの(冬季は防寒対策ができるもの)、簡易カッパ、タオルなどを持参
文・写真 / 五十川ルリ子(@ruricocoa )
協力:沖縄県・(一財)沖縄観光コンベンションビューロー
この記事を書いた人
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